全国的なカラス被害で、ゴミの散乱や騒音と同様に問題となるのが
繁殖期のカラスによる威嚇行動です。
今回は、繁殖期のカラスに襲われることのないよう、
私たちができる対策についてまとめました。
目次
カラスの種類/人を襲うのはハシブトガラス
私たちが身近に見かけるカラスは、主に「ハシブトガラス」と「ハシボソガラス」の2種類です。
ハシブトガラスは名前の通りくちばしが分厚く、額が盛り上がっていて体もずんぐりと大ぶり。鳴き声は「カーカー」と澄んでいます。
一方、ハシボソガラスはくちばしが細く、体はやや小さめでスマート。声は「ガーガー」「ギャーギャー」としわがれています。
どちらも記憶力に優れ、高い知能を持っていますが、人を攻撃するのは主にハシブトガラスの方です。
カラスの繁殖期/人を襲うのは繁殖期!
カラスの繁殖期は、3月から7月ごろ。さらに繁殖期のヒナのふ化直後~巣立ち後10日の間、ハシブトガラスは巣にいる卵やヒナを守るため、巣のそばを通りかかる人の頭上を飛んで威嚇したり、ときには足で頭を叩いてきます。
よく「頭スレスレを飛んできてカラスの足が頭をかすめた」とか「後ろから頭を蹴られた」と言われるのが、4月中旬から8月ぐらいのこの時期。巣立ちが近づいてくるとハシブトガラスはより神経質になり、巣の近くや縄張り内に人がいるだけで警戒態勢に入るのです。
威嚇行動と鳴き声/カラスからの警告を知ることが大切
人間はカラスにとって大きく怖い存在であり、普段、ハシブトカラスは突然人を襲うことはありません。事前に次のような「警告」を出しています。
1.電線やとまっている木の枝をつつく、くちばしをカチカチ鳴らす。
2.電線や樹木にとまり、人に向かってガーガーと大声で鳴く。
3.鳴きながら頭上すれすれをめがけて飛びまわる。(おどし飛行)
こういった行動が見られたら、近くに巣があると思われますので素早く立ち去ります。 この威嚇行動を無視すると、後方から足で頭を蹴るといった攻撃をしてきます。警戒している親カラスから離れる時は、なるべく背を向けないようにしましょう。
カラスの体の構造上、飛びながらくちばしで突くという動作はできないので、くちばしで突かれる、ということはありません。
カラスの襲撃から身を守るために
繁殖期には、カラスの動きに注意します。巣のある場所が確認でき、迂回できるなら巣の場所を避けて通ります。巣の近くを通らなければならない場合は、帽子をかぶったり、傘をさして速やかに通ります。後頭部を隠すとカラスが狙いやすい場所を見失うためです。両腕を上げるのも、カラスが翼が腕に当たるのを嫌うので効果的です。
特にお子さんには、巣の近くを通る際に騒いだりカラスを刺激しないように教えましょう。
これをしたら危険!
巣立ちの頃、巣立ったばかりのヒナが、まだうまく飛べずに地面に落ちることがあります。落ちても親に守られながら地上で成長を待つため、知らずにヒナに近づくと、親カラスがヒナを守ろうと襲ってくることがあります。保護しようとしたりせず、なるべく近づかないほうがよいでしょう。
ただし、道路や歩道などにヒナが落ちていて、通行に支障がある場合などは、道路の管理者や、各区や市の環境担当部署まで相談しましょう。
巣をつくられないために
実はカラスは繁殖期以外では巣を使いません。カラスの巣は、家というより子供を落ち着いた環境で育てるための場所です。巣作りされるのを予防するには、
1.樹木の剪定をこまめに行い、巣作りしにくくする
カラスは、巣を外から見られないように、枝葉の茂った大きな樹木などに好んで巣を作ります。このような樹木は、毎年巣を作られることがありますので、しっかり剪定することが大切です。
2.春先、巣作りを始めたらすぐに巣を撤去する
カラスは3月ごろから巣作りを始めます。庭木などに巣作りを始めたら、完成してしまう前に業者に連絡し、撤去を依頼するなど早めに対応しましょう。
巣ができてから撤去すると、巣を壊されたカラスは、数日のうちに同じ場所にまた巣を作ろうとしてしまいます。カラスが巣の中でじっとしているようであれば、既に卵を温めていると思われます。卵が孵化して、子育てが終わってから撤去する方が効果的です。
電柱に巣をつくられたら
カラスはヒナを見守りながら餌を得られるよう、見晴らしの良い電柱の上に巣を作ることがあります。巣作りの材料として針金ハンガーや木の枝が使われ、これらが電線に触れてしまうと、停電の原因となることがあるそうです。
針金製のハンガーや枝等は屋外に放置しないようにし、もし電柱の上にカラスの巣を見つけたら、お近くの電力会社に連絡しましょう。その際に、電柱の高さ3m付近にある「電柱番号」を一緒に伝えるようにするとよいでしょう。
カラスが人に威嚇や攻撃を行うのは、繁殖期に限られます。
カラスは雛や卵を守ろうと過敏になっているためですので、
人がその事を十分に理解し、生態や対処法を考えて行動すれば、
むやみにカラスを怖がらず、被害を防ぐこともできるでしょう。